「修業を10年積んできた。資金もコツコツ貯めた。物件も決まった。あとは融資の面談だけ──」
ここまで来た方が、最後の最後で 公庫の面談で踏み外して融資が通らない ケースを、私はこれまで何度も見てきました。
逆に、面談での 質問の意図を正確に読み取り、修行経験を「数字と覚悟の言葉」に翻訳できる人 は、自己資金が少なめでも、業態が珍しくても、しっかり通っています。
この記事では、川崎・横浜・東京23区 で多くの飲食店オーナーの公庫面談に立ち会ってきた経験から、面談で 必ず 聞かれる5つの質問と、その意図、そして修行経験者ならではの答え方をお伝えします。
これから公庫面談に臨む方は、 想定問答を作る前にこの記事を一度読んでみてください。
なぜ「5つの質問」を押さえることが面談の8割を決めるのか
公庫の担当者が面談で見ているのは、書類だけでは分からない 「人」と「事業の現実感」 です。
具体的には次の3点を、 すべての質問を通じて確認しよう としています。
- 本気度 ─ 一過性の思いつきではないか
- 解像度 ─ 開業後の生活と数字を、自分の言葉でリアルに語れるか
- 回復力 ─ うまくいかなかった時に逃げずに対応できるか
5つの質問はすべて、この3点を別の角度から検証するために設計されています。
つまり 質問単体でテクニカルに答えても通りません。「この人は本気で、解像度が高くて、転んでも立ち上がれそうだ」と一貫して伝わる 答え方の地層 を作ることが大事です。
質問① 「なぜ、この仕事で独立しようと思ったのですか?」
面談の冒頭、ほぼ100%聞かれます。担当者にとっては アイスブレイクではなく、最初の本気度チェック です。
担当者が見ているポイント
- 動機が 個人的な情熱 と 市場の機会 の両輪で成り立っているか
- 「なんとなく」「会社員が嫌になって」では絶対に通らない
- 修業期間と動機の 時系列の整合性
NG回答例
「サラリーマンに向いていなくて、自由に働きたかったんです」 「飲食が好きなので、いつかは自分の店を持ちたいと思っていました」
→ どこにでもある話 で、覚悟も解像度も伝わりません。
修行経験者ならではの答え方(テンプレ)
「○○店で○年間、和食の調理場で修業をしてきました。その中で、 ○○というお客様の体験を、もっと自分なりの形で提供できないか とずっと考えてきました。具体的には ── (ここで自分の店の独自性を1〜2文)。修業期間中に、 このアイデアを実現するには独立しかない と確信し、3年前から具体的に物件と資金計画の準備を進めてきました」
ポイントは3つ:
- 修業先と期間を具体的に(信頼性)
- 修業中に気づいた “顧客への提供価値” を言葉にする(独自性)
- 「3年前から準備していた」など、計画的に動いてきた事実(本気度)
「思いつきで独立するわけではない」と、 言葉で説明する前に時系列で証明する のが効果的です。
質問② 「どんなお店を出されるのか、もう少し具体的に教えてください」
ここで担当者が確かめているのは、 頭の中にお店の解像度が4Kで描けているか です。事業計画書に書いてある内容を、 自分の言葉で立体的に再現できるか がポイント。
答えるべき要素(5W1H+α)
| 要素 | 例 |
|---|---|
| 誰に(Who) | 「30〜50代の食通の男性、客単価7,000円帯」 |
| 何を(What) | 「季節食材の和食コース、日本酒15種類のペアリング」 |
| どこで(Where) | 「川崎駅西口から徒歩5分、夜の通行量が多い飲食店通り」 |
| いつ(When) | 「ディナー営業のみ、17:30〜23:00、月8日休み」 |
| なぜ(Why) | 「修業先の常連層と同じだが、より個別の対応ができる規模で」 |
| どのように(How) | 「12席のカウンター中心、予約8割・フリー2割」 |
NG回答例
「美味しい料理を出して、地元の人に愛されるお店にしたいです」
→ 誰の、何のお店かが分からない。担当者は何も判断できません。
修行経験者ならではの答え方
修業先での 具体的な数字 を、自分の店に落とし込んで語ると説得力が一気に増します。
「修業先の○○では、ディナーの客単価が 平均6,800円、月の売上が 概ね950万円 で安定していました。私の店はそれより 1割小さい規模(座席12席)で、客単価は 同等の7,000円帯、月商目標は 480万円 に置いています。これは修業先の 半分以下の固定費 で運営できる前提で、現実的な数字だと判断しています」
修業先の数字は、 公庫担当者が「飲食店の現場感」を確認するための最強の材料 です。
質問③ 「自己資金は、どうやって貯めてこられたのですか?」
これは 過去の自分の通信簿 を見せる質問です。担当者にとって、自己資金は単なる金額ではなく、 「この人がこれまでどう生きてきたか」のサマリー に見えています。
担当者が見ているポイント
- 計画性(コツコツ毎月積み立ててきたか)
- 本気度(直近で慌てて集めた金ではないか)
- 自己資金の “出所”(贈与・借入・タンス預金など曖昧な部分がないか)
通帳のコピーから何が読み取られているか
- 直近6ヶ月〜2年の入出金履歴
- 毎月コンスタントに積み立てた形跡
- 大きな入金(贈与・借入)の有無と性質
- 生活費とのバランス
タンス預金や、面談直前の親族からの大きな入金は、 自己資金として認められない ことが多いです。
修行経験者ならではの答え方
「修業先での給与は手取り 22万円 ほどでした。生活費を切り詰め、 月7〜8万円 を独立資金として積み立ててきました。直近5年間で約 450万円 を貯め、これが今回の自己資金 500万円 のうちの大半です。残りの50万円は、両親から 贈与 で受け取ったもので、贈与契約書も用意しています」
ポイント:
- 金額・期間・出所を明確に
- 「贈与」と「借入」を曖昧にしない
- 修業時代の手取りと貯金額の整合性が取れている
「コツコツ貯めた」という事実は、 修行を続けたという事実そのものが証明 になります。修業期間が長い人ほど、この質問は強い武器になります。
質問④ 「売上計画の根拠は何ですか?」
ここが 面談の天王山 です。事業計画書の数字が「願望」なのか「計算」なのかを、容赦なく確かめてきます。
担当者が見ているポイント
- 客単価 × 座席数 × 回転率 × 営業日数 の式が成り立っているか
- 修業先・周辺競合の 実データ に基づいているか
- 季節変動・立ち上がり期間が 織り込まれているか
NG回答例
「だいたい月に500万円くらい売り上げる想定です」
→ 「だいたい」「くらい」は地雷ワード。担当者は瞬時に「数字を詰めていない」と判断します。
修行経験者ならではの答え方
「客単価 7,000円 × 12席 × 回転率 1.4回転 × 月25日営業 = 月商 約294万円 が、立ち上がり期(開業後3〜6ヶ月)の想定です。これは修業先の 新規開業時の客足 をベースにしています。7ヶ月目以降 は、認知が進んで回転率が 1.7回転 に上がる想定で 月商 約357万円、 2年目以降 は予約8割の想定で 月商 約480万円 を目標にしています。 2ヶ月単位で売上をモニターし、想定の70%を切ったら SNS強化・ランチ営業の追加で対応します」
ポイント:
- 算式を口頭で言える(暗記レベル)
- 時期別に数字が分かれている(立ち上がり / 安定 / 成長)
- 悪化したときの “閾値と対応策” までセットで答える
数字は紙の上だけのものではなく、 「この人の頭の中で生きている」 と感じさせるレベルに仕上げてください。
質問⑤ 「うまくいかなかった時は、どうされますか?」
最後に、ほぼ必ず聞かれる 回復力チェック の質問です。多くの方が「絶対成功させます!」と返してしまい、ここで評価を落とします。
担当者が見ているポイント
- 最悪のシナリオを想定しているか
- 想定外を想定内に変える “プランB” を持っているか
- 失敗時の返済原資をどう確保するか
NG回答例
「絶対に成功させます!」 「気合いで頑張ります」
→ 回答になっていません。担当者は「リスクが見えていない人だ」と判断します。
修行経験者ならではの答え方(3段階で答える)
1段階目:早期発見
「2ヶ月単位で売上と来店数をモニターし、 想定の70%を切ったら “アラート” とします」
2段階目:施策
「アラート時の打ち手は3つ用意しています。 ① メニュー構成の見直し(客単価を下げてもランチ層を取り込む) ② SNS・口コミ施策の強化(食べログ・Instagram運用の月予算を倍に) ③ 営業時間の拡大(ランチ営業の追加、最大で月25日 → 28日へ)」
3段階目:最悪時のキャッシュ計画
「それでも売上が 想定の50%まで落ち込んだ場合 でも、 6ヶ月間は返済が継続できる現金バッファ を運転資金に組み込んでいます。その間に営業改善が見込めない場合は、店舗の縮小営業や業態変更も視野に入れます」
ポイント:
- 数字の閾値(70%、50%)が出てくる
- 打ち手が複数あり、コスト感も分かっている
- 最悪時の返済可能性まで言える
「失敗を想定すること = 諦めること」ではなく、 「想定したからこそ守りが固い」 という見え方になります。
補足:1,000万円超の融資を狙う場合の追加質問
融資希望額が 1,000万円を超えると、審査基準が一段厳しくなります。質問①〜⑤に加えて、次のような踏み込んだ質問が来ます。
- 「なぜこの規模が必要なのか」 ─ 設備・物件への投資配分の根拠
- 「2号店・3号店の構想は」 ─ 単店黒字化後の成長戦略
- 「担保や連帯保証人を立てられるか」 ─ 規模に応じた信用補完
- 「物件契約のタイミングと、契約解除時のリスクは」
特に飲食店で 1,500〜2,000万円規模 の融資を狙う場合、 修業10年以上の実績 × 立地に見合った客単価設定 × 投資回収シミュレーション の三点セットが揃わないと厳しい印象です。
ここまで詰める段階になると、 税理士の同行と事前のリハーサル が、通過率を大きく押し上げます。
面談前にやっておくべき準備リスト
| やること | 期限 |
|---|---|
| 5つの質問の 想定問答を文字に起こす | 面談2週間前まで |
| 数字(客単価・回転率・月商・固定費)を 暗唱できる レベルに | 面談1週間前まで |
| 修業先の 実数値 を整理(売上・原価率・人件費率) | 面談2週間前まで |
| 通帳・確定申告書・自己資金の説明書類を 時系列で揃える | 面談3日前まで |
| 税理士同席のリハーサル(口頭での再現練習) | 面談3日前まで |
| 当日の 服装・持ち物(事業計画書のコピーは複数部) | 前日 |
川崎・横浜・東京23区で創業融資を考えている方へ
公庫の支店は 支店ごとに審査傾向や注力業種が異なります。同じ事業内容でも、 どの支店に申請するか で通過率が変わるケースは珍しくありません。
私は川崎・横浜・東京23区エリアで多くの飲食店オーナー様の公庫面談に立ち会ってきました。 複数の公庫支店との専用相談窓口 を持っており、案件の特性に応じて最適な支店をご提案できます。
もし以下のいずれかに当てはまる方は、 無料相談(60分) でご状況をお聞かせください。
- 修業を積んで、いよいよ独立に向けて動き始めた
- 自己資金は 300万円以上 ある
- 物件の候補が決まっている、または契約済
- 1,000万円超の融資 を視野に入れている
- 過去に他事務所で断られた経験がある
まとめ:面談は「翻訳の場」である
公庫面談で問われているのは、 修業で蓄えてきたあなたの実力を、 “公庫担当者の言語” に翻訳できるか ということです。
修業の年月、コツコツ貯めた自己資金、頭の中にある店のイメージ ── これらはすべて、あなたの 本気度・解像度・回復力の証拠 です。それを、 数字と具体例と段階を踏んだ答え方 で伝えれば、面談は怖くありません。
「自分一人で大丈夫だろうか」と不安なときは、いつでもご相談ください。事業計画書のレビューから面談リハーサル、当日の 同行立ち会い まで、伴走します。
修業を続けてきたあなたの 理想のお店づくり を、最後の関門で躓かせないために。