この記事の結論
・居抜きは初期費用を大きく抑えられ、審査でも「身の丈に合った計画」に見えやすい
・スケルトンが正解になるのは、業態や動線が既存設備と合わない場合
・物件タイプで借入額と通過率は変わる。決め手は修業内容と店のイメージとの一致
「居抜きとスケルトン、どっちで開業すべきですか?」
無料相談の場で、ほぼ毎回いただく質問です。
ネットで検索すると、「居抜きはコスパがいい」「スケルトンの方が自由度が高い」。両方の情報が出てきて、結局どちらを選べばいいか分からなくなりますよね。
結論から言います。「あなたの修業内容、自己資金、目指す店のイメージ」によって答えは変わります。そして、その判断を間違えると、創業融資の借入可能額が500〜1,000万円単位で変わることも珍しくありません。
この記事では、川崎・横浜・東京23区で多くの飲食店オーナーの物件選びと創業融資をサポートしてきた経験から、
- 居抜き/スケルトンそれぞれの 初期費用の現実
- どちらを選ぶべきかの 判断軸
- 物件タイプによって 創業融資の通過率と借入額がどう変わるか
- よくある 失敗事例3つ
を、ぼかさずにお伝えします。
これから物件を探し始める方へ。不動産屋に問い合わせる前に、この記事を読んでください。
まず用語整理:居抜きとスケルトンの違い
居抜き物件
前テナントが使っていた内装・厨房設備・客席什器がそのまま残っている物件のことです。
- 飲食店の場合、シンク、コンロ、冷蔵庫、客席テーブルなどがそのまま使える
- 「居抜き譲渡費」として 数十万〜数百万円 を前テナントに支払うケースが多い
- 入居から開業までが 1〜2ヶ月 と短い
スケルトン物件
コンクリート打ちっぱなし・配管のみの状態。何もない、完全にゼロから作る物件です。
- 内装・設備すべてを自分で設計・発注する
- 改装期間は 2〜4ヶ月
- 自分の理想を100%実現できる代わりに コストと時間がかかる
💡 ポイント:居抜きとスケルトンの中間に「準居抜き」(一部の設備のみ残っている)も存在します。本記事では、分かりやすく2種類に絞って解説します。
初期費用の現実
業態・規模によって変動しますが、客席12〜15席のスモール飲食店を前提にした目安です。
居抜き物件の初期費用
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 物件取得費(敷金・礼金・前家賃・仲介手数料) | 200〜400万円 |
| 居抜き譲渡費 | 100〜500万円 |
| 部分改装費(看板・サイン・一部内装の手直し) | 100〜300万円 |
| 厨房機器の追加・更新 | 50〜300万円 |
| 食器・什器・備品 | 50〜100万円 |
| 開業前の運転資金(家賃3〜6ヶ月分・人件費・仕入れ・広告) | 200〜400万円 |
| 合計 | 約700〜2,000万円 |
スケルトン物件の初期費用
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 物件取得費 | 200〜400万円 |
| 内装工事費(施工) | 600〜1,200万円 |
| 設計・デザイン料(工事費の10〜15%) | 60〜180万円 |
| 厨房設備・機器(新規導入) | 300〜600万円 |
| 給排水・電気・ガス工事(追加分) | 100〜200万円 |
| 食器・什器・備品 | 50〜120万円 |
| 開業前の運転資金(家賃3〜6ヶ月分・人件費・仕入れ・広告) | 200〜400万円 |
| 合計 | 約1,510〜3,100万円 |
→ 居抜きとスケルトンで、初期費用は約1.5〜2倍違います。
💡 見落としがち:設計・デザイン料は工事費の10〜15%が業界標準です。12〜15席の小規模店でも60〜200万円はかかります。さらに工事期間中の家賃も発生します。開業前の固定費は、想像以上に膨らむんです。
居抜きを選ぶべきケース
① 業態が前テナントと近い
前テナントが居酒屋で、自分も居酒屋業態。この場合、厨房レイアウトや客席動線をほぼそのまま活かせます。改装費が大幅に圧縮できます。
逆に、居酒屋物件でイタリアンを始めるのは要注意です。厨房設備が違いすぎて、結局スケルトン同等の改装費がかかることもあります。
② 開業を急ぎたい
「修業を終えてから半年以内に開業したい」というスピード重視のケースです。居抜きなら入居から1〜2ヶ月で開業できます。スケルトンは3〜5ヶ月はかかります。
③ 自己資金が少なめ
自己資金200〜400万円クラスの方は、居抜き一択と思って良いです。スケルトンの初期費用は、最低でも1,500万円規模。融資が通っても、自己資金比率の問題で大型融資が引き出しにくい。運転資金まで届かないリスクが出ます。
④ 修業期間が3〜5年程度
修業期間がそれほど長くない場合、「店のイメージが固まりきっていない」ことが多いんです。居抜きで一旦オープンして、徐々に自分の色を加えていく。この方が、リスクが低い選び方です。
スケルトンを選ぶべきケース
① 修業10年以上、明確な店のイメージがある
「カウンター12席、オープンキッチン、薪窯設置」。こういう譲れないこだわりがある方です。居抜きで妥協すると、結局後から大きな改装が必要になり、二重コストがかかることが多いです。
② 客単価7,000円以上の高単価業態
客単価が高い店ほど、空間設計と動線が売上に直結します。居抜きで動線が悪い物件を選ぶと、回転率が落ちて、月商が伸び悩む原因になります。
③ 自己資金500万円以上+1,500万円超の融資を狙う
自己資金がある程度ありつつ、1,500〜2,500万円規模の融資を考えている方です。スケルトンの初期費用は1,500〜3,000万円規模。自己資金が薄いと、運転資金まで届かないリスクがあります。自己資金500万円以上が最低ライン、できれば700万円以上が理想です。
④ 業態が前テナントと完全に違う
居抜きで残っている設備を、半分以上交換することになる。そんな場合は、最初からスケルトンの方が安く済むケースもあります。
公庫融資への影響:物件タイプで結果が変わる
ここが本題です。物件タイプは、創業融資の通過率と借入可能額に直接影響します。
居抜き物件の場合
通過率は高めです。理由はこうです。
- 初期費用が安いため、 借入金額そのものが小さい → 審査ハードルが低い
- 物件の機能が既に証明されている(前テナントが営業していた)→ 担当者の安心材料
- 融資希望額が500〜1,000万円のレンジ に収まりやすい → 審査基準が緩めのレンジ
スケルトン物件の場合
計画書の精度が問われます。注意点はこちら。
- 改装費が大きいため、 借入希望額が1,000万円超になりがち → 審査ハードルが上がる
- 内装・設備の 投資配分の妥当性 を細かく聞かれる(どの設備にいくら、なぜ必要か)
- 工事スケジュールと 開業時期の整合性 を求められる
- スケルトンでも 自己資金比率が薄い と「設備過剰」と判断されることも
借入可能額と総事業費のリアル(参考値)
→ 同じ自己資金でも、スケルトンの方が大型融資を引き寄せやすい。一方で、計画書の精度が低いと逆に借入額が抑えられる。この二面性があります。また、スケルトンで自己資金300万円以下では総事業費が足りなくなるため、自己資金を増やすか、居抜きに切り替えるかの判断が必要です。
よくある失敗事例3つ
失敗①:居抜き設備をそのまま使ったら故障続出
「コンロが古くて開業3ヶ月で故障」「冷蔵庫が業務量に耐えられず買い替え」。居抜き譲渡時に設備の年数とメンテナンス履歴を確認しなかった結果、開業後に予想外の出費が続くケースです。
→ 対策:契約前に、設備の購入年・メンテナンス履歴・残存価値を必ず確認してください。中古の業務用機器の耐用年数は、5〜8年が一般的です。
失敗②:居抜きの動線が業態に合わず、売上が伸びない
「厨房から客席までの動線が悪く、提供スピードが上がらない」「客席の配置で死角ができて回転率が下がる」。前テナントの業態と自分の業態が微妙にズレている場合に、起こりがちなケースです。
→ 対策:物件下見の段階で、自分の業態の動線シミュレーションを行うこと。「ピーク時に何人で何席を回すか」を、物理的に確認することが大事です。
失敗③:スケルトン改装で予算オーバー、運転資金が枯渇
「最初の見積もり1,000万円だったが、追加工事で1,500万円に膨らんだ」。結果、開業時の運転資金が薄くなり、3ヶ月後に資金繰りで苦しむケースです。
→ 対策:内装業者には複数社から相見積もりを取り、想定の1.3倍の予算で計画を組むこと。公庫の融資申請時にも、この余裕分を運転資金として組み込んでおくと安全です。設計料は工事費の10〜15%が業界標準なので、最初から織り込んでおいてください。
修業経験者ならではの判断軸
修業を積んできた方は、物件を見るときに次の3点を意識してください。
① 修業先の厨房レイアウトを基準にする
修業先で使い慣れた厨房レイアウトが、自分の店の最適解とは限りません。ただし、「自分が一番速く動けるレイアウト」は確実に修業先のものです。居抜き選定でも、スケルトン設計でも、修業先を基準に評価すると、判断がブレません。
② 客単価と席数の比率を確認
客単価7,000円のコース業態なら、12〜16席が現実的な上限です。客席が多すぎると、シェフ一人での提供品質が落ちます。
③ 業界標準の家賃比率を守る
家賃は月商の10%以内が業界標準です。居抜きで安く済んでも、家賃が高すぎると経営が苦しくなります。物件取得費の安さに、飛びつかないことです。
あわせて読みたい:居抜き物件とは|引き継げるもの・引き継げないもの/店舗の内装費用|見積書の見方と減額交渉
よくある質問
- Q. 居抜きとスケルトン、創業融資に通りやすいのはどちらですか?
- A. どちらが有利という決まりはありません。ただし居抜きは初期投資を抑えられるため、自己資金が少ない場合は計画が組みやすくなります。
- Q. 居抜き物件の造作譲渡料は融資の対象になりますか?
- A. 設備資金として扱われるのが一般的です。譲渡内容の内訳がわかる書面を用意してください。何にいくら払うのかが不明なままだと、審査で止まります。
- Q. 居抜きなのに追加工事が必要になるのはなぜですか?
- A. 前の業態と厨房機器・ダクト・給排水の仕様が合わないことが多いためです。契約前に厨房設備の状態を確認しないと、見積が後から膨らみます。
川崎・横浜・東京23区で物件を探している方へ
物件選びは、 創業融資の通過率と借入額を左右する最初の意思決定 です。 不動産屋は物件を売るプロですが、 ファイナンス視点で物件を評価するプロではありません。
当事務所は、 川崎・横浜・東京23区 を中心とした飲食店オーナー様の 物件選定段階からの伴走 を多数経験しています。 物件のメリット・デメリットを ファイナンス視点で評価 し、 居抜きとスケルトンの判断、初期費用の妥当性、融資戦略 までを一気通貫でサポートします。
以下に当てはまる方は、 無料相談(60分) でご状況をお聞かせください。
- 居抜き物件とスケルトン物件で 迷っている
- 物件候補が 2〜3件まで絞れた が、どれを本命にするか判断できない
- 初期費用と融資希望額の バランス が分からない
- スケルトンで開業したいが、 計画書の数字に自信がない
- 1,000万円超の融資を狙う ので、物件評価から相談したい
まとめ:物件選びは「修業内容と店のイメージ」で決まる
居抜きとスケルトンに、絶対的な正解はありません。自分の修業内容、自己資金、目指す店のイメージ。ここからどちらが自分の理想を実現する最短ルートかを考えてください。
- 居抜き が向いている:業態が前テナントと近い、自己資金少なめ、修業3〜5年、開業を急ぎたい
- スケルトン が向いている:修業10年級、明確なこだわりがある、自己資金300万以上、業態が独自
そして、物件タイプは創業融資の通過率と借入額に直結します。居抜きで500〜1,000万円のレンジを狙うのか。スケルトンで1,500〜2,000万円の大型融資を引き寄せるのか。物件選定段階から融資戦略を組み立てることが、独立成功の最大のポイントです。
物件探しを始める前に、第三者の専門家に一度ご相談ください。不動産屋とのやり取り、計画書のドラフト、公庫との事前協議まで。チームとして動かすことで、無駄な失敗を避けられます。
なお、創業融資は「一人で公庫に行って交渉するもの」とは限りません。公庫と日常的に連携している税理士が計画段階から関与すると、数字の整合性と書類の質が上がり、審査は格段にスムーズに進みます。当事務所の審査通過率が100%(事前協議で見極めた案件)なのは、提出前に審査目線で整えるこの工程があるからです。
創業計画書、AIとの会話だけで作れます
当事務所の「創業計画書AIヒアリング」は、AIの質問に答えていくだけで、日本政策金融公庫様式の創業計画書Excelが完成する無料ツールです。自己資金の出どころや返済バランスの審査チェックつき。飲食店の創業融資に特化しています。登録特典として、15項目の審査チェックリスト付きPDF「公庫融資 審査の着眼点ガイド」もお送りしています。
無料でAIヒアリングを試す →この記事は飲食店の開業・創業融資ガイドの一部です。資金の全体像、物件と設備、創業計画書、融資の申込までを準備の段階順にまとめています。