食料品の消費税1%で起きる「仕入のサイレント値上げ」|請求額が同じでも損をする仕組みと確認のしかた

食料品の消費税1%で起きる「仕入のサイレント値上げ」 税務会計

この記事の結論

・食材の税率が8%→1%になっても、請求書の合計が同じなら税抜価格は約7%上がっている
・原則課税の店は決算で納める消費税が増える。食材の仕入が年600万円なら年約39万円
・見るのは合計ではなく「税抜額」。今のうちに税抜単価を控え、4月より前に仕入先へ「税抜はそのまま、税率だけ1%に」と伝えておく

2027年4月、食材の消費税が8%から1%に下がる予定です(2026年10月時点で法案は国会で審議中)。

4月の請求書を開いたら、合計額が3月と同じだった。「消費税が下がったのに安くならないな」と思っても、そのまま払ってしまう店は多いはずです。ここに落とし穴があります。合計が同じということは、税抜の価格が上がっているということです。

合計が同じでも、税抜は上がっている

税抜1万円の食材で比べます。

今(8%) 4月〜 本来(1%) 4月〜 据え置き(1%)
税抜額 10,000円 10,000円 10,693円
消費税 800円 100円 107円
合計 10,800円 10,100円 10,800円

本来なら合計は10,100円に下がります。右の列は合計を10,800円のまま据え置いた場合で、税抜額が693円、約7%上がっています。請求額が変わらないので、店からは値上げに見えません。いわば「サイレント値上げ」です。

放置すると、どれだけ損をするか

原則課税の店で、税抜1万円の仕入1回あたりの影響を、今と比べるとこうなります。

本来の請求(10,100円) 据え置き(10,800円)
業者への支払い 700円減る 変わらない
決算で納める消費税 700円増える 693円増える
手元に残るお金 変わらない 693円減る

本来の請求なら、支払いが減った分と納税が増えた分が相殺されて、手元のお金は変わりません。据え置きでは支払いは減らないのに、差し引ける消費税は800円から107円に減るので、納税だけが693円増えます。

支払いが毎月同じなので、気づくのは決算で消費税を計算したときです。食材の仕入が年600万円(税込)の店なら、決算で納める消費税が年約39万円増えます。

【簡易課税・免税事業者の店は】
決算の消費税は増えません。ただ、本来10,100円に下がるはずの支払いが10,800円のままなので、その差額がそのまま損になります。年600万円の仕入なら、こちらも年約39万円です。課税方式に関係なく、どの店も確認が必要です。

確認のしかた:4つの手順

1. 今のうちに 主な仕入の「税抜単価」を控えておく
2. 4月より前に 仕入先へ「税抜単価はそのまま、税率だけ1%に」と伝えておく
3. 4月以降は 請求書の合計ではなく「税抜額」を控えた単価と比べる
4. 上がっていたら 理由を確認し、交渉するか他社の見積もりを取る

1. 控えるのは、金額の大きい上位の品目だけでいい

全部の品目を控える必要はありません。肉・魚・野菜・米など、仕入額の大きい上位10品目ほどで十分です。月ごとに単価が動く生鮮は、3月の請求書を1枚残しておけば、税抜単価の比較の基準になります。

2. 先に伝えておくこと自体が、値上げの牽制になる

仕入先の多くは、自分の仕入も1%に下がるので、税抜価格を据え置いても困りません。それでも税込の合計を据え置く業者が出るのは、店が気づかないからです。4月より前に「税抜は今のまま、税率だけ変えてください」と一言伝えておけば、据え置きで請求してくる可能性はかなり下がります。

3. 請求書は「税抜額」の行を見る

インボイス(適格請求書)には、税率ごとの税抜額か税込額と、消費税額が書かれています。見るのは合計ではなく税抜額です。4月をまたぐ締めの請求書では、3月までの取引分が8%、4月以降の取引分が1%で分けて書かれます。3月31日までに引き渡された食材は、支払いが4月以降でも8%です。

4. 上がっていたら、まず理由を聞く

税抜価格が上がること自体は、原材料や物流費の値上がりなど正当な理由がある場合もあります。問題は、理由の説明がないまま税込据え置きの形で上がっていることです。理由を聞いて納得できなければ、交渉するか、他社の見積もりを取る。比べる基準があるのは、手順1で単価を控えた店だけです。

業者に伝えるときの文例

いつもお世話になっております。
2027年4月から食料品の消費税率が1%に変わる予定ですので、4月以降の請求は、税抜単価は現在のまま、税率のみ1%での計算をお願いいたします。単価を変更される場合は、事前に品目ごとにお知らせください。

メールやLINEで残る形で送っておくと、あとで「聞いていない」となりません。

よくある質問

Q. 請求書の合計が下がっていれば問題ないですか?
A. 合計が10,800円から10,100円前後に下がっていれば、税抜は据え置かれています。合計が下がっていても下がり幅が小さい場合は、税抜が一部上がっています。合計ではなく税抜額で比べてください。
Q. 原則課税なら、仕入が下がっても下がらなくても同じではないですか?
A. 違います。本来どおり下がれば、支払いの減少と納税の増加が相殺されて手元のお金は変わりません。据え置かれると、支払いは減らずに納税だけが増えるので、その分だけ損をします。
Q. 3月に仕入れて4月に支払う食材は何%ですか?
A. 8%です。3月31日までに仕入先から引き渡された食材は、支払いが4月以降でも8%のままです。3月末に出荷されて4月に届くような取引は、請求書に書かれた税率で処理します。
Q. スーパーや業務用スーパーで買う分も確認が必要ですか?
A. 店頭の価格表示は税込総額なので、比べるならレシートの税抜額です。ただ店頭価格は日々動くので、確認の手間に見合うのは、継続して取引している卸や仕入先です。

まとめ

食材の消費税が下がっても、税込の請求額が同じなら税抜価格は約7%上がっています。原則課税の店は決算の納税が増え、簡易課税や免税の店も下がるはずの支払いが下がらない。どの店も、見るべきは請求書の合計ではなく税抜額です。

今のうちに主な仕入の税抜単価を控えて、4月より前に仕入先へ一言伝えておく。これだけで防げます。改正の全体像は食料品の消費税1%で飲食店は何が変わるか、原則課税の店の課税方式の見直しは原則課税か簡易課税かにまとめています。

この記事は飲食店の開業・創業融資ガイドの一部です。資金の全体像、物件と設備、創業計画書、融資の申込までを準備の段階順にまとめています。