飲食店の創業融資|「身の丈を超えた設備投資」はなぜ落ちるのか——理想の店と通る計画のあいだ

創業融資

創業融資の相談で、いちばん心苦しいけれど、いちばん大事な話がこれです。

「その内装、いったん白紙にしませんか」

よくあるすれ違い

たとえば、こんな計画を考えてみてください。

理想の店づくりに、内装・厨房・物件取得でトータル3,000万円。手元の自己資金は150万円。残りはぜんぶ借りたい。

気持ちは痛いほど分かります。長年思い描いてきた店ですから。でも、この計画は公庫の審査でほぼ確実に苦戦します。

理由は「夢が大きいから」ではありません。数字の構造が破綻しているからです。

自己資金150万円に対して、借入2,850万円。仮に7年返済なら、月々の返済はざっと34万円です。飲食店の利益率で、月34万円の返済を開業初月から背負う。よほどの繁盛でも苦しい数字です。

審査側はこれを「返せない計画」と読みます。落とすためではありません。貸したらこの人が潰れてしまうと判断するんです。

「削る」のではなく「順番を変える」

ではどうするか。夢を諦める話ではありません。順番の話です。

第一段階の店を設計する。席数を絞る。居抜き物件を使う。厨房は中古とリースを組み合わせる。飲食店の初期投資は、やり方次第で半分近くまで圧縮できることが珍しくありません。当事務所の支援でも、居抜き活用で当初計画の6割程度の投資に収めて満額融資、という例は多くあります。

繁盛の実績を作ってから、二段階目に進む。開業から1〜2年、数字を出した店には「実績」があります。実績があれば、追加融資の交渉は創業時よりはるかに楽です。理想の内装への改装、2店舗目。夢の後半は、実績を武器に取りに行く方が確実です。

審査側の視点を数式にすると

シンプルに、こう考えてください。

投資の規模は、夢の大きさではなく、自己資金と返済能力から逆算する。

自己資金が投資総額の3割あれば、計画は安定して見えます。最低でも1割。そして、軌道に乗った後の月間利益が、月々の返済額の2倍以上あること。この2つを満たす投資額が、いまのあなたの「身の丈」です。

身の丈は、恥ずかしい言葉ではありません。時間とともに大きくできる、現在地の測定値です。

手持ち資金で「耐える期間」も忘れずに

もう一つ。設備に資金を注ぎ込みすぎた計画には、落とし穴があります。運転資金の不足です。

飲食店は、開業してすぐ黒字になるとは限りません。客足が安定するまでの数ヶ月、家賃と人件費と仕入を払い続ける体力が必要です。

設備で資金を使い切る計画は、この「耐える期間」の想定が抜けています。運転資金として、最低でも固定費の2〜3ヶ月分を計画に組み込む。ここまで含めて「身の丈」です。

まとめ

理想の店を諦める必要はありません。ただ、一段階目の店と二段階目の店に分ける。この設計に切り替えるだけで、通らなかった計画が通る計画に変わります。

「自分の場合、いくらまでの投資なら現実的か」。無料相談で、自己資金と返済能力から一緒に逆算します。物件を契約してしまう前に、一度ご相談ください。

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この記事は飲食店の開業・創業融資ガイドの一部です。資金の全体像、物件と設備、創業計画書、融資の申込までを準備の段階順にまとめています。