飲食店の内装・厨房機器の減価償却|耐用年数と返済原資への影響

創業融資

内装に800万円かけたとします。この800万円は、払った年に全額が経費になるわけではありません。

何年かに分けて少しずつ経費にするのが減価償却です。そして飲食店の場合、この仕組みが融資の返済と直結します。

耐用年数の実務と、資金繰りへの影響を整理します。

減価償却がなぜ飲食店で重要なのか

理由は2つあります。

1つは初年度の税金です。800万円を一度に経費にできれば赤字になり税金はゼロ。しかし実際は年数で割るため、思ったより利益が出て、税金が発生します。開業初年度に「利益は出ていないのに納税がある」という事態はここから起きます。

もう1つは返済原資です。融資の返済は経費になりません。返済に回せるお金は「税引後利益+減価償却費」です。減価償却費は現金が出ていかない費用なので、その分は手元に残ります。

つまり、減価償却費が大きい年は帳簿上の利益が小さくても返済能力はある。この関係を理解していないと、返済計画の数字が組めません。

飲食店の主な資産と耐用年数

法定耐用年数の代表的なものです。

資産 耐用年数の目安
建物附属設備(電気・給排水・ガス設備) 15年
建物附属設備(冷暖房・空調) 13年または15年
店舗内装(賃借物件の造作) 建物の耐用年数等を勘案して見積る
厨房機器(冷蔵庫・コンロ・食洗機など) おおむね6年〜8年
テーブル・椅子(金属製) 15年
テーブル・椅子(金属製以外) 8年
看板・ネオンサイン 3年
POSレジ・パソコン 4年〜5年
車両(キッチンカー等) 4年〜6年

区分の判定は実務上の判断が入ります。ここは自己流でやらず、確定申告の前に確認してください。

賃借物件の内装は「造作」として扱う

飲食店で一番金額が大きいのが内装工事です。自分の建物ではなく賃借物件の場合、これは建物附属設備賃借建物の造作として資産計上します。

賃借物件の造作の耐用年数は、その造作の種類・用途・使用材質等を勘案して合理的に見積ることになっています。実務では10年から15年程度で設定されることが多い項目です。

ここで大事なのは、内装工事の見積書を費目ごとに分けてもらうことです。「内装工事一式 800万円」では、電気設備・給排水・空調・造作を分けられません。分けられなければ、有利な区分での償却ができない可能性があります。

見積書の読み方は店舗の内装費用で詳しく扱っています。内訳を出してもらう理由は、交渉のためだけではありません

30万円未満の資産は一括で経費にできる場合がある

青色申告をしている中小事業者には、少額減価償却資産の特例があります。取得価額30万円未満の資産を、その年に全額経費にできる制度です(年間合計300万円まで、適用期限あり)。

飲食店だと、小型の冷蔵庫、電子レンジ、製氷機、椅子、パソコン、POS端末などが該当しやすい。

ただし青色申告をしていることが前提です。開業したら青色申告承認申請書を必ず出してください。提出期限があります。

厨房機器の選び方は厨房機器の揃え方にまとめています。

中古の厨房機器を買った場合

中古資産は法定耐用年数をそのまま使いません。使用可能期間を見積るか、簡便法で計算します。

簡便法では、法定耐用年数をすべて経過した資産なら「法定耐用年数 × 20%」、一部経過なら「法定耐用年数 − 経過年数 + 経過年数 × 20%」(いずれも1年未満切捨て、最低2年)です。

耐用年数6年の厨房機器を、4年落ちで買った場合。6 − 4 + 4 × 0.2 = 2.8年 → 2年。短い年数で償却できるため、初期の経費が大きくなります。

中古を選ぶ理由は初期費用の圧縮ですが、税務上も早く経費化できる利点があります。ただし故障リスクとの兼ね合いです。

返済計画に減価償却を組み込む

創業計画書の返済欄で、多くの方が利益だけを見ています。正しくはこうです。

年間の返済可能額 = 税引後利益 + 減価償却費

内装800万円を15年で償却するなら年53万円、厨房機器400万円を6年なら年67万円。合計で年120万円が、現金の出ない費用として計上されます。

この120万円は返済に回せます。逆に言えば、償却が終わったあとは返済原資が減るということでもあります。借入期間が償却期間より長い場合、後半で資金繰りが締まります。

返済の考え方は公庫審査に落ちる創業計画書のNG例でも触れています。

よくある質問

Q. 飲食店の内装工事の耐用年数は何年ですか?
A. 賃借物件の造作は、種類・用途・材質等を勘案して合理的に見積ることになっており、実務では10年から15年程度で設定されることが多い項目です。電気設備や給排水設備は建物附属設備として15年が目安です。
Q. 厨房機器の耐用年数は何年ですか?
A. おおむね6年から8年が目安です。中古で購入した場合は簡便法により短い年数で償却できます。4年落ちで耐用年数6年の機器なら2年になります。
Q. 内装費用を一括で経費にできますか?
A. できません。資産計上して耐用年数にわたり減価償却します。ただし30万円未満の資産は、青色申告をしていれば少額減価償却資産の特例で一括経費にできる場合があります。
Q. 減価償却費は融資の返済にどう関係しますか?
A. 返済原資は税引後利益と減価償却費の合計です。減価償却費は現金が出ていかない費用のため、その分が手元に残り返済に充てられます。償却が終わると返済原資が減る点にも注意してください。

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この記事は飲食店の開業・創業融資ガイドの一部です。資金の全体像、物件と設備、創業計画書、融資の申込までを準備の段階順にまとめています。