この記事の結論
- 創業計画書で落ちる理由は、書き方の巧拙ではなく「検証できない数字」と「つじつまの合わなさ」です
- 飲食店でやりがちなNGは8パターン。どれも提出前に直せます
- 書類のNGは、そのまま面談の質問になります。ごまかせません
創業計画書のNG例は、なぜ審査で落ちるのか
創業融資には決算書がありません。実績がないからです。
その代わりに審査へ情報を届けるのが創業計画書です。つまりこれは作文ではなく、証拠資料です。
だから審査担当者が見ているのは、文章のうまさではありません。その数字は検証できるか。書いてあることは互いに矛盾していないか。この2つだけです。
逆に言えば、落ちる計画書には共通のパターンがあります。飲食店で特によく見る8つを、順番に見ていきます。
NG例1|売上の根拠が「経験上いけると思います」
いちばん多いNGです。
「前の店でこれくらい売れていたので、月250万円はいけます」
気持ちは分かります。でも担当者は、この数字を検証できません。検証できない数字は、信用されない数字です。
正しくはこう組み立てます。
席数16席、昼は客単価900円で2回転、夜は1,400円で1回転、月26日営業。当初は稼働6割。
ここまで分解すれば、担当者は前提の一つひとつを吟味できます。「回転数が強気では」と指摘されたら、そこだけ直せばいい。指摘できる計画書は、通る計画書です。
NG例2|自己資金の出どころが説明できない
面談では通帳を見られます。見られているのは残高ではなく履歴です。
申込の直前に、まとまったお金がポンと入っている。出どころを聞かれて、言葉に詰まる。これがいわゆる見せ金です。
親から一時的に借りて入れた、タンス預金をまとめて入れた。悪気がなくても、履歴で説明できないお金は評価されません。それどころか、取り繕う人だという印象だけが残ります。
詳しくは自己資金がいくら必要かの記事にまとめています。現金で貯めている方は、今日口座に移してください。履歴は今日からしか作れません。
NG例3|開業初月から稼働率90%
オープン景気を織り込んだ強気の計画。これも落ちます。
新しい店にお客様がつくまでには時間がかかります。それを知らない計画書は、「この人は飲食を分かっていない」と読まれます。
当初は6割前後が現実的です。そして低い数字から始まる計画のほうが、むしろ評価されます。控えめに見積もっても返済できる、という構造になるからです。
NG例4|経歴と、これから開く店がつながっていない
イタリアンで10年働いてきた人が、突然ラーメン店を開く計画を出す。
絶対にダメではありません。ただし、つながりの説明が要ります。なぜその業態なのか、修業や準備は何をしたのか。ここが空白だと、思いつきに見えます。
未経験の業態なら、修業期間・研修・共同経営者の経歴など、補強材料を必ず書いてください。
NG例5|設備にお金を使い切り、運転資金がゼロ
内装にこだわり、厨房を新品で揃え、調達した資金をきれいに使い切る計画。
抜けているのは、開業から客足が安定するまでの数ヶ月を耐える体力です。家賃も人件費も仕入も、その間ずっと出ていきます。
固定費の2〜3ヶ月分は必ず計画に入れてください。設備が過大なら、居抜き・中古・リースで一段階目を設計し、実績を作ってから追加融資で理想を取りに行く。順番を変えるだけで通る計画になります。
NG例6|数字が欄ごとに食い違っている
創業計画書は欄が分かれています。だから、直し忘れが起きます。
売上の欄を直したのに、収支計画の月商が古いまま。必要資金の合計と、調達の合計が一致していない。人件費の人数と金額が噛み合わない。
担当者はここを必ず突き合わせます。一箇所ズレていると、他の数字も疑われます。
整合性については計画書のNGワードを扱った記事でも触れています。全体を最低2回は往復してください。
NG例7|「必ず」「絶対」など根拠のない断定
「必ず 黒字化します」「リピート率90%を実現します」「SNSで話題になれば集客は問題ありません」
数字が大きいほど、根拠を問われます。答えられなければ、計画全体の信頼が落ちます。
断定するなら根拠とセットで。根拠がないなら、書かない。それだけです。
NG例8|返済原資が足りない
最後は算数の話です。
返済の原資は売上ではなく利益、正確には「利益+減価償却費」です。この金額が年間の返済額を上回っていなければ、そもそも返せません。
目安として、軌道に乗った後の月間利益が、月々の返済額の2倍以上あるか。ギリギリの計画は「返せない計画」と読まれます。
ここが足りないなら、借入額を減らすか、売上の設計か経費を見直すしかありません。
飲食店の融資面談では、書類のNGがそのまま質問になる
ここまでのNGは、書類だけの問題ではありません。
担当者は面談で、引っかかった箇所を必ず聞いてきます。「この回転数の根拠は」「この入金は何ですか」「初月からこの稼働は強気では」。
そのとき、自分の言葉で答えられるかどうかがすべてです。「詳しい人に作ってもらったので」は、その瞬間に計画書全体の信頼を崩します。
面談で聞かれることは公庫面談で聞かれる5つの質問の記事にまとめました。
提出前のセルフチェック
- 売上を「席数×客単価×回転数×営業日数」で説明できる
- 自己資金の出どころを通帳の履歴で説明できる
- 創業当初の稼働率が6割前後に抑えてある
- 経歴と業態がつながっている(未経験なら補強材料がある)
- 運転資金として固定費2〜3ヶ月分が入っている
- 必要資金の合計と調達の合計が一致している
- 根拠のない断定・盛った数字が書かれていない
- 軌道後の月間利益が月々の返済額の2倍以上ある
全部にチェックがつけば、提出できる状態です。つかない項目が、いまのあなたのやることリストです。
実際の書き方は創業計画書の記入例が参考になります。
よくある質問
- Q. 創業計画書で落ちる理由は何ですか?
- A. 検証できない数字と、欄どうしのつじつまが合わないことです。売上根拠がない、自己資金の出どころを説明できない、返済額が利益を超えている、といった点が典型です。
- Q. 書き方が下手だと審査に落ちますか?
- A. 文章の巧拙は問われません。数字が検証でき、話に矛盾がないかどうかです。
- Q. 提出前に自分でチェックできる点はありますか?
- A. 売上の根拠、自己資金の履歴、返済額と利益の関係、この3つが噛み合っているかを見てください。書類のNGは、そのまま面談の質問になります。
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当事務所は川崎駅徒歩8分、飲食店専門の会計士税理士事務所です。日本政策金融公庫の担当者と日常的に連携しており、事業計画書の作り込みから面談の同席まで対応しています(完全成功報酬制・融資が実行されなければ0円)。オンラインでのご相談は全国から可能です。
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この記事は飲食店の開業・創業融資ガイドの一部です。資金の全体像、物件と設備、創業計画書、融資の申込までを準備の段階順にまとめています。