日本政策金融公庫 創業計画書の記入例|飲食店の全8欄(Excel様式そのまま持ち帰れる)

創業融資

創業計画書を前に、ペンが止まっていませんか?

公庫の様式は、A3用紙たった1枚です。なのに「この欄、何をどこまで書けばいいのか」という相談が、毎週のように届きます。

この記事では、飲食店(カフェの例)の記入例を使って、公庫様式の全8欄を上から順に見ていきます。数字はあくまで例です。そのまま流用せず、ご自身の計画に置き換えてください。

① 創業の動機|4行を「経験→準備→立地→未来」の順で

記入例:「都内カフェチェーンに10年勤務し、店長として店舗運営と焙煎を担当してきた。開業資金として毎月5万円を6年間積み立て、360万円を準備。地元の商店街に朝営業のカフェがなく、駅徒歩3分の居抜き物件を確保できたため、開業を決意。地域の常連に長く愛される店を作りたい。」

たった4行。でも、ここに物語を込めます。

なぜこの商売か(経験)。本気度(準備)。なぜここで今か(立地)。そして目指す姿。この順番で、一本の物語につなげるんです。

逆にやってはいけないのが避けるべきNGワード。「絶対に成功する」のような、根拠のない断言です。

② 経営者の略歴|飲食経験を年月・役職つきで

記入例:「H27.4 ○○カフェ株式会社 入社(ホール・バリスタ業務)/R1.4 同社 副店長(シフト・発注管理)/R4.4 同社 店長(売上管理・焙煎責任者)」

飲食店の創業融資では、同業態での実務経験が審査の土台になります。

ポイントは「何を任されていたか」まで書くこと。シフト管理、発注、売上管理。任されてきた仕事の一つひとつが、経営能力の証明になります。

③ 取扱商品・サービス|売れ筋の構成比まで

記入例:「ドリップコーヒー(客単価500円・売上シェア60%)/カフェラテ(550円・30%)/自家製焼き菓子(300円・10%)。セールスポイント:自家焙煎の鮮度と店長10年の接客経験。」

「コーヒーと焼き菓子の店です」で終わらせない。何が、いくらで、どれだけ売れるのか。構成比まで書けると、計画書の顔つきが変わります。

④ 取引先・取引関係|掛取引の条件も書く

記入例:「仕入先:△△珈琲貿易(生豆・シェア60%・月末締め翌月払い)、地元ベーカリー(20%・現金)。販売先:一般個人100%(現金・カード)。」

飲食店は「売上は現金、仕入は掛け」。実は資金繰りに有利な構造なんです。ここが整理されていると、資金計画の説得力がぐっと増します。

⑤ 従業員|家族従業員は分けて記載

記入例:「常勤役員1名(本人)/パート2名(うち家族1名)」

⑥ 借入の状況|住宅ローンも正直に

住宅ローン、自動車ローン、カードローン。既存の借入は、すべて書きます。

「書いたら不利になりそう」と思いますか? 逆です。公庫は個人信用情報を照会します。書き漏れは「隠した」と受け取られ、金額以上のダメージになるんです。

⑦ 必要な資金と調達方法|左右の合計を必ず一致させる

記入例(必要な資金・計700万円):内装工事300万円(○○工務店見積)/厨房設備150万円(中古)/什器・レジ70万円/運転資金180万円(家賃・仕入・人件費の約3ヶ月分)

記入例(調達方法・計700万円):自己資金300万円/日本政策金融公庫からの借入400万円

最重要ルールは2つだけです。

ひとつ、左右の合計を1円単位で一致させること。ふたつ、自己資金には通帳で出どころを説明できる金額だけを書くこと。

借りられる金額の目安は自己資金の約3倍が借入の現実的なラインです。

⑧ 事業の見通し|「席数×客単価×回転数」で組む

記入例(創業当初):売上131万円(12席×客単価700円×3回転×26日営業×稼働率60%)/原価39万円(30%)/経費70万円(家賃15万・人件費35万・その他20万)/利益22万円

記入例(軌道後・1年後):売上175万円(稼働率80%)/利益48万円

全ては、売上の根拠を掛け算で示せるかどうか。「経験上これくらい売れる」では、担当者は検証のしようがありません。

利益のラインも明確です。月々の返済額(借入400万円÷84ヶ月≒4.8万円)の2倍以上。ここを確保します。

業態別の記入例|ラーメン店・カフェ・居酒屋の数字はこう変わる

同じ様式でも、業態が変われば入る数字はまるで違います。代表的な3業態について、⑧事業の見通しと⑦必要な資金を実数で並べます。自分の業態に近いものを土台にしてください。

ラーメン店(12席・駅前・昼夜通し営業)

  • 売上:12席 × 客単価1,000円 × 昼2.5回転/夜1.5回転 × 月26日 × 稼働6割=月商約75万円(当初)。稼働8割で約100万円(軌道後)
  • 原価率:30〜35%(スープ・麺・チャーシューの自家製比率で動く)
  • 必要資金:物件取得120万+内外装350万+厨房280万+什器50万=設備800万/運転200万=合計1,000万円
  • ポイント:回転数が武器の業態。席数が少なくても回転で稼げる説明ができれば強い。反面、製麺機や寸胴など厨房設備が重くなりやすいので、居抜き・中古の検討を必ず計画に書く

カフェ(16席・住宅街・昼中心)

  • 売上:16席 × 客単価900円 × 昼2回転/夜1,400円×0.5回転 × 月26日 × 稼働6割=月商約60万円(当初)。稼働8割で約80万円
  • 原価率:28〜33%(フード比率が上がると高くなる)
  • 必要資金:物件取得150万+内外装300万+厨房200万+什器80万=設備730万/運転170万=合計900万円
  • ポイント:滞在時間が長く、回転が読みにくい業態。回転数を強気に置くと必ず突っ込まれます。豆や焼き菓子の物販、テイクアウトの比率を明示して、席数に依存しない売上の柱を書けると説得力が出ます

居酒屋(24席・繁華街・夜のみ)

  • 売上:24席 × 客単価3,200円 × 1.3回転 × 月25日 × 稼働6割=月商約150万円(当初)。稼働8割で約200万円
  • 原価率:30〜33%(ドリンク比率が高いほど下がる)
  • 必要資金:物件取得250万+内外装450万+厨房250万+什器・食器100万=設備1,050万/運転250万=合計1,300万円
  • ポイント:客単価が高く、ドリンク比率で利益が決まる業態。フードとドリンクの構成比を③欄に書き、原価率の根拠にしてください。曜日変動が大きいので、平日と週末を分けて説明できると強い

3業態に共通する注意

  • 当初の稼働率はどの業態でも6割前後。オープン景気を織り込まない
  • 必要資金の合計と、調達(自己資金+借入)の合計は必ず一致させる
  • 運転資金は固定費の2〜3ヶ月分。設備で使い切らない

記入例を「自分の計画」に変えるときの注意

最後に、いちばん大事な話をします。

記入例の丸写しでは、審査に通りません。

面談では、計画書の数字を口頭で説明することになります。自分で組み立てた数字でなければ必ず詰まります。「この売上の根拠は?」と聞かれて黙ってしまったら、そこで評価が決まってしまうんです。

この記事から真似ていいのは、構成だけ。動機の物語、掛け算の売上、左右一致の資金計画。中身は、ご自身の言葉と数字で埋めてください。

申込みから面談・実行までの全体の流れは飲食店が公庫から創業融資を受ける方法【完全ガイド】を、審査で何が見られるかは通過率の真実をあわせてどうぞ。

あわせて読みたい:飲食店の開業資金の内訳厨房機器の揃え方

よくある質問

Q. 創業計画書はどの欄から書き始めるべきですか?
A. 「事業の見通し」から逆算するのが実務的です。売上と経費が固まると必要な資金と借入額が決まり、他の欄の数字が自動的に揃います。
Q. 創業計画書は手書きとパソコン、どちらがいいですか?
A. どちらでも審査に差はありません。読みやすさと修正のしやすさを考えると、データで作るほうが実務的です。
Q. 創業計画書の記入欄が足りないときはどうすればいいですか?
A. 別紙添付で問題ありません。ただし本紙だけを読んでも筋が通るように書き、別紙は根拠資料として添えてください。

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当事務所は川崎駅徒歩8分、飲食店専門の会計士税理士事務所です。日本政策金融公庫の担当者と日常的に連携しており、事業計画書の作り込みから面談の同席まで対応しています(完全成功報酬制・融資が実行されなければ0円)。オンラインでのご相談は全国から可能です。

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この記事は飲食店の開業・創業融資ガイドの一部です。資金の全体像、物件と設備、創業計画書、融資の申込までを準備の段階順にまとめています。