融資が下りて店が開いた。ここで気が緩みますが、開業直後には期限のある届出がいくつもあります。
とくに青色申告承認申請書は、出し忘れると初年度の節税手段をまとめて失います。期限は開業から2ヶ月以内です。
開業届から最初の確定申告まで、時系列で並べます。
開業から1ヶ月以内に出すもの
個人事業の開業・廃業等届出書(税務署)
提出期限は事業開始から1ヶ月以内。屋号、事業内容、開業日を書きます。
屋号付きの銀行口座を作るときに、この控えを求められることがあります。控えは必ず保管してください。
事業開始等申告書(都道府県税事務所・市区町村)
個人事業税に関する届出です。名称と期限は自治体によって異なります。
開業から2ヶ月以内に出すもの(最重要)
所得税の青色申告承認申請書(税務署)
提出期限は開業から2ヶ月以内(1月15日以前の開業なら3月15日まで)。
これを出さないと白色申告になります。失うものは大きい。
- 青色申告特別控除(最大65万円。電子申告等の要件あり)
- 赤字の繰越し(3年間。開業初年度が赤字になる飲食店では効きます)
- 30万円未満の資産を一括経費にできる特例
- 青色事業専従者給与(家族への給与を経費にできる)
飲食店は開業初年度に赤字が出やすい業態です。その赤字を翌年以降の黒字と相殺できるかどうかは、青色申告かどうかで決まります。1枚の紙で数十万円の差が出ます。
少額資産の特例については飲食店の内装・厨房機器の減価償却で扱っています。
従業員を雇うときに出すもの
給与支払事務所等の開設届出書(税務署)
雇用開始から1ヶ月以内。従業員の給与から所得税を天引きする(源泉徴収)ための届出です。アルバイトでも必要です。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(税務署)
これは出しておくと楽になる届出です。
源泉徴収した所得税は原則として毎月納付ですが、この申請を出すと年2回(7月と1月)にまとめられます。給与を支払う人数が常時10人未満の事業所が対象です。
開業直後の飲食店で毎月納付は手間です。開業届と一緒に出しておくことをおすすめします。
労働保険・社会保険
従業員を1人でも雇えば労災保険は必須です(労働基準監督署)。雇用保険は週20時間以上などの要件を満たす人がいる場合(ハローワーク)。社会保険は法人なら強制、個人事業なら常時5人以上で強制加入です(年金事務所)。
開業年の記帳でつまずくところ
開業前に払った費用(開業費)
開業日より前に払った、物件の内見の交通費、開業前の家賃、名刺やチラシの作成費、研修費などは開業費としてまとめて資産計上できます。
開業費は繰延資産で、好きなタイミングで好きな額を経費にできるという特徴があります。初年度が赤字なら経費化を後回しにして、黒字化した年に使う、という調整ができます。
ただし領収書がないと計上できません。開業前の支出こそ、レシートを残してください。
現金商売の売上計上
飲食店は現金比率が高く、レジ締めの記録がそのまま売上の証拠になります。日々のレジ精算表を必ず残してください。
ここが曖昧な店は、税務調査で最初に見られます。POSレジのデータ、日報、現金出納帳。この3つが揃っていれば説明できます。
まかないの扱い
従業員に食事を出す場合、一定の要件を満たさないと給与として課税されます。要件は、従業員が食事代の半分以上を負担していること、かつ事業者の負担が月額一定額以下であること。
無料でまかないを出している店は、この点を確認しておいてください。
最初の確定申告まで
個人事業なら、翌年の2月16日から3月15日までに前年分の確定申告をします。
やることは大きく3つ。
- 1年分の記帳を完成させる(売上・仕入・経費)
- 棚卸をする(12月31日時点の食材・ドリンクの在庫)
- 減価償却費を計算する
棚卸を忘れる飲食店は多いです。年末時点の在庫は経費になりません。翌年に繰り越します。数えていないと正しい利益が出ません。
消費税については、開業から2年間は原則として免税事業者です。ただしインボイス登録をすると課税事業者になります。取引先に法人が多い店では判断が必要になります。
融資を受けた店がとくに気をつけること
公庫から借入がある場合、決算書は次の借入のときに見られます。2店舗目、設備の入れ替え、運転資金の追加。どれも過去の決算内容が判断材料です。
創業計画書で出した数字と、実際の決算が大きく乖離していると説明を求められます。計画どおりにいかないこと自体は問題ではありません。なぜずれたかを説明できるかが見られます。
計画と実績の整合については飲食店が失敗する5つのパターンも参考になります。
よくある質問
- Q. 開業届はいつまでに出しますか?
- A. 事業開始から1ヶ月以内に税務署へ提出します。屋号付きの銀行口座開設で控えを求められることがあるため、控えは保管してください。
- Q. 青色申告承認申請書の期限はいつですか?
- A. 開業から2ヶ月以内です(1月15日以前の開業なら3月15日まで)。出し忘れると白色申告になり、65万円の特別控除、赤字の3年繰越し、30万円未満の資産の一括経費化がすべて使えなくなります。
- Q. 開業前に払った費用は経費になりますか?
- A. 開業費として資産計上し、任意のタイミングで経費にできます。物件の内見の交通費、開業前の家賃、チラシ作成費などが該当します。ただし領収書が必要です。
- Q. 従業員のまかないは経費になりますか?
- A. 一定の要件を満たせば福利厚生費として処理できます。従業員が食事代の半分以上を負担し、かつ事業者の負担が月額一定額以下であることが条件です。要件を外れると給与として課税されます。
川崎・横浜・東京23区で開業予定の方へ
当事務所は川崎駅徒歩8分、飲食店専門の会計士税理士事務所です。日本政策金融公庫の担当者と日常的に連携しており、創業融資を計画段階からサポートしています。オンラインで全国からのご相談も可能です。
創業計画書、AIとの会話だけで作れます
当事務所の「創業計画書AIヒアリング」は、AIの質問に答えていくだけで、日本政策金融公庫様式の創業計画書Excelが完成する無料ツールです。自己資金の出どころや返済バランスの審査チェックつき。飲食店の創業融資に特化しています。登録特典として、15項目の審査チェックリスト付きPDF「公庫融資 審査の着眼点ガイド」もお送りしています。
この記事は飲食店の開業・創業融資ガイドの一部です。資金の全体像、物件と設備、創業計画書、融資の申込までを準備の段階順にまとめています。