「面談に何を持っていけばいいですか。通帳は全部見せるんですか」
公庫の面談日が決まると、この質問が必ず届きます。
準備で手が止まる方は多いです。でも、山は思ったほど高くありません。公庫が公式に案内している書類と、面談で実際に見られる資料を分けて整理すれば、前日の夜に慌てることはなくなります。
この記事では、飲食店の創業で日本政策金融公庫(国民生活事業)の面談を受ける方に向けて、申込みで出す書類、面談の持ち物、通帳の見せ方、当日に出る数字の質問を順に整理します。
日本政策金融公庫の創業融資で出す書類|申込みの時点で必要なもの
公庫の「創業予定の方」の案内ページでは、申込みはインターネット申込みが基本で、24時間365日受け付けています。この時点で電子データとして準備する主なものは次のとおりです。
- 創業計画書
- 設備資金の場合は見積書(内装・厨房機器・什器など)
- 法人の場合は履歴事項全部証明書
- 本人確認書類(運転免許証の両面、マイナンバーカードの表面のみ、またはパスポートの該当ページ)
- 許可や届出が必要な事業の場合は許認可証
- 電子契約サービスを使う場合は、利用申込書と送金先口座の通帳の写し
郵送で申し込む場合は、これに借入申込書(国民生活事業用)が加わります。申込みの窓口は、法人なら本店所在地、個人なら創業予定地に近い支店が通常です。
飲食店で気になるのは許認可証でしょう。営業許可は店が完成してから出るものなので、融資の前には取れないのが普通です。順番は飲食店の営業許可の記事にまとめました。融資の前に動くのは、保健所への事前相談までです。
ここまでは、ネットで申し込む段階の話です。面談の持ち物は、別に考えます。
面談当日の持ち物チェックリスト|飲食店で用意する9点
公庫の案内では、面談で資金の使いみちと事業計画を聞かれ、事業計画に関する資料と、資産・負債がわかる書類を用意することになっています。店舗の予定地を訪問することもあります。オンライン面談にも対応しています。
飲食店の場合、私が持参をすすめるのは次の9点です。
- 創業計画書の控え(印刷) 提出したものと同じ版を手元に置きます。数字を口頭で聞かれたとき、紙を見て答えられます。
- 見積書 内装、厨房機器、什器。内装を800万円で計画したなら、見積書の合計も800万円。宛名と日付、有効期限もそろえます。内装の見積の読み方は店舗の内装費用の記事へ。
- 物件の資料 賃貸借契約書、または申込書と募集図面。家賃30万円、保証金8か月で240万円なら、その数字が計画書の「必要な資金」と同じかを確認します。
- 通帳 自己資金の積み上がりが追える口座。見せ方は次の見出しで説明します。
- 経歴のメモ 勤務先、在籍期間、役職、担当。たとえば「店長3年、副店長3年、発注と原価管理を担当」と、口で言える形にしておきます。
- 売上の根拠メモ 席数×客単価×回転数×営業日の計算を、A4で1枚。組み方は売上予測の立て方に書きました。
- メニュー案と仕入先 主力5〜6品の価格、原価率の見立て、仕入先の候補と支払い条件。
- 許認可の準備状況 食品衛生責任者の資格、保健所への事前相談の記録。
- 既存の借入がわかる資料 住宅ローン、カードローン、車のローンの残高と月々の返済額。
全部を分厚いファイルにする必要はありません。クリアファイルに順番どおり入れて、必要な紙をすぐ出せれば十分です。
日本政策金融公庫の面談で通帳はどこまで見せるか
「通帳は全部見せるんですか」
結論から言います。自己資金として計画書に書いた金額の、積み上がりが追える範囲を見せます。ほかの口座を隠すという意味ではありません。聞かれたら出せる状態にしておく、ということです。
公庫が見ているのは、残高の大きさよりお金の動きです。毎月コツコツ積んできたのか。ある日突然入ったのか。次の3つの形に分けて考えると整理できます。
- 毎月の積立 給与口座から毎月8万円を積み立てて、4年で384万円。これは通帳が一番きれいに語ってくれる形です。計画書の「創業の動機」にも書けます。
- 大きな入金 親から150万円の援助を受けた、というような入金です。いつ、誰から、贈与なのか借入なのかを短いメモにします。贈与なら書面があると話が早くなります。
- 手持ちの現金 タンス預金は、出どころの説明が難しい。自己資金に入れるなら、早めに通帳へ入れて動きを残しておきます。面談の直前に現金を入金して残高を作ると、不自然な入金としてそのまま残ります。
もうひとつ。通帳は、面談の前に必ず記帳しておきます。まとめ記帳で「合算」と出ている行は、中身が見えないので説明が必要になります。
自己資金の「出どころ」がどう見られるかは、自己資金の出どころで落ちる人、通る人に詳しく書きました。
面談で出る数字の質問と答え方
持ち物がそろっても、数字が口から出なければ意味がありません。飲食店の創業面談で定番の3つを、答えの形で見ておきます。全体の質問は面談で必ず聞かれる5つの質問と実際に聞かれた25問にまとめています。
「この売上の根拠は何ですか」
席数、客単価、回転数、営業日で答えます。たとえば16席、客単価1,200円、昼2回転、月26日営業、稼働6割なら、16席×1,200円×2回転×26日×0.6=約60万円。これが創業当初の月商の置き方です。「経験上このくらい」では、担当者は検証できません。
「毎月いくら返せますか」
借入1,000万円を84か月で返すなら、年3.85%で月々約13.6万円、年5.45%で約14.3万円です。利率は令和8年10月1日現在の、無担保・税務申告2期未済の基準利率(3.85〜5.45%)を使いました。どの利率になるかは融資の種類と審査で決まります。
この返済額に対して、営業利益が月々の返済額の2倍以上あるか。そこまで数字で言えると、面談の空気が変わります。
「自己資金はどうやって貯めましたか」
通帳を開いて答えます。「毎月8万円を4年間、この口座に積み立てました。ここで15万円入っているのはボーナスです」。通帳の1行ずつに、言葉がつながる状態にしておきます。
面談の前日までにやること|10項目
- 通帳を記帳して、まとめ記帳の行をなくす
- 創業計画書を印刷して、赤ペンで気になる数字に印をつける
- 見積書の合計と、計画書の「必要な資金」を突き合わせる
- 「必要な資金」と「調達方法」の合計が、1円単位で一致しているか確かめる
- 家賃と保証金が、物件資料と同じ数字か確かめる
- 売上の計算式を、紙を見ずに言ってみる
- 毎月の返済額を言ってみる
- 既存の借入の残高と月々の返済額を確認する
- オンライン面談なら、通信とカメラ、画面に出す資料を試す
- 予定地を案内できる日程を空けておく
面談の持ち物でよくある失敗5つ
- 見積書と計画書の数字がずれている 見積は850万円、計画書は800万円。小さな差でも「どちらが本当ですか」と聞かれます。
- 通帳の記帳が古い 最新の入出金が見えず、積み上がりの説明が止まります。
- 自己資金の額と通帳が合わない 計画書に500万円と書いて、通帳は380万円。差額の120万円の説明が要ります。
- 資料が多すぎて探せない 質問されて紙をめくり続けると、準備不足に見えます。
- 計画書の数字を覚えていない 自分の言葉で組んだ数字なら、自然に出てきます。
計画書そのものの落とし穴は公庫審査に落ちる創業計画書のNG例に、全体の流れは飲食店が公庫から創業融資を受ける方法【完全ガイド】にあります。計画書の書き方は創業計画書の記入例とExcel様式をどうぞ。
よくある質問
- Q. 日本政策金融公庫の面談に持っていくものは何ですか
- A. 創業計画書の控え、見積書、物件の資料、通帳、経歴のメモ、売上の計算メモが基本です。申込みで出した書類は公庫に届いていますが、控えは必ず手元に置いてください。
- Q. 日本政策金融公庫の面談で通帳はどこまで見せますか
- A. 計画書に書いた自己資金の、積み上がりが追える範囲です。毎月の積立や大きな入金の出どころを説明できる形にし、事前に記帳しておきます。
- Q. 日本政策金融公庫の面談はオンラインでもできますか
- A. できます。公庫の案内でオンライン面談に対応しているとされています。ただし、店舗の予定地は別に訪問されることがあります。
川崎・横浜・東京23区で開業予定の方へ
当事務所は川崎駅徒歩8分、飲食店専門の会計士税理士事務所です。日本政策金融公庫の担当者と日常的に連携しており、面談の同席まで対応しています(完全成功報酬制・融資が実行されなければ0円)。オンラインでのご相談は全国から可能です。
この記事は飲食店の開業・創業融資ガイドの一部です。資金の全体像、物件と設備、創業計画書、融資の申込までを準備の段階順にまとめています。